THE 超人様 牛丼&ココア

 読みました。けっこう面白かったです。サブタイトルも良い。
 個人的にはカナディアンマンがファミレスの店員にメイプルシロップがカナダ産かどうか問い詰めるとこがツボに入った。
 キン肉マンの超人オリンピック時代の超人って全国の小学生たちがそれなりに世界各国の特徴を捉えた超人を考えて投稿していて、例えばインドといえばカレーということでカレクック、ドイツといえばナチスと軍服ということでブロッケンマン、イギリスといえば紳士〜からの発想で甲冑っぽいデザインのロビンマスク、フランスの怪盗アルセーヌルパンからルピーン、といった具合に皆それなりに国の特徴やら名物やらが盛り込まれているわけです。
 しかしカナディアンマンのモチーフはカナダの国旗。当時少年だった投稿者がカナダに関するものを連想してみたけどたぶんカナダの国旗しか思い浮かばなかったんだろうな……、という事情が伺えますが、私もカナダといえば国旗くらいしか思いつかないよ。ちなみに今回の漫画に出てきたメイプルシロップはこの国旗に描かれたメイプルリーフの樹液から採られていると思われます。やはり国旗しかネタがない!

 カナディアンマンスペシャルマンビッグボンバーズといえばかませ犬、ネタキャラというイメージがすっかり定着してしまいましたが、登場時の活躍に関してはカナディアンマンはロビンをそこそこ苦しめながらもあっさり敗北、スペシャルマンキン骨マンの罠にかかって予選敗退するもテリーマンを激励、とそれなりに見せ場のあるちょい役なんですよね。
 問題は再登場してスポットが当たった時で、カナディアンマンさんは黄金のマスク編で「キン肉マンはどうせ死ぬなら黄金のマスクを取り返してから死ねばよかったんだ」とあんまりなDQN発言をしたがためにクズ超人の称号をゲットしてしまったというのが悲しい。もっともこの時期は将軍様もパイプ椅子で大暴れしてたりするし全体的に超人がDQNだったという気はする。あとカナディアンマンはスグルvs将軍戦でいちおう罪滅ぼし的な活躍はしているんだけどそこはスルーされがち。
 これで出番が終わっていればカナディアンマンもネタ扱いされることはなかったんだろうけど、夢の超人タッグ編でビッグボンバーズを結成してしまったことでネタ超人としての殿堂入りを確定させてしまったという気はします。このコンビ誰に負けるか?だけにしかみんな興味なかったでしょ?
 三名様のうち、DQNキャラが定着しているカナディアンマンに対してスペシャルマンは割と常識人、っていうイメージがあるけど、妙にプライドの高さが鼻につく発言が多いし、王位争奪戦編での「この戦いが終わったら王位をかけて戦おうじゃないか」という発言にはみんなが「なんでだよ」とツッコんだ。THE 超人様でもこうしたスペシャルマンの秘めたる狂気に触れてくれることを期待したい。
 プリプリマンに関しては割とどうでもいい、というか次回別の超人が座っていても別に構わない。しょせん出オチ超人だし。

 また今回の巻末で新たな超人総選挙が開催されることが発表されることが発表されましたが、今回の投票先はけっこう本気で悩む。いや普通に現時点での印象で三人選ぶと悪魔将軍、サイコマン、シルバーマンみたいな結果になっちゃうんだけどやはりウォーズマンには一票入れなきゃって思うし、シリーズ全体を振り返るとブラックホールテリーマンに一票入れたいし、始祖の中ではガンマンやジャスティスマンにも入れたいし……とかなり悩んでしまう。
 ここは正義悪魔完璧から一人選ぶ方式で投票先を決めるべきか……、と皆さんも今のうちに投票先を考えておいてください。

とりとめのない話

 今やってるキン肉マンは面白いけど、ネット上で二世の存在を「なかったこと」にしたいという意見を見ると二世のヒットと反省があったからこそ今のキン肉マンがあるんだ、完璧超人始祖編がキレイに終わった今だからこそ二世の続編をやるべきなんだ、と思っていましたが、二世をちらっと読み返してみたら別にやらなくてもいいか……、という気持ちになりました。

 やはりヒカルドとかシヴァあたりの扱いを見るとちょっと作品の価値観への嫌悪は否めない部分はあるし、今のキン肉マンに登場するキャラや正悪の価値観が良すぎるので二世の扱いはシティハンターに対するエンジェルハートみたいにパラレルワールドということでいいのではないかしら。さすがに悪魔将軍の設定とか今肉と二世の間で矛盾がデカすぎるし。
 それにしても今のキン肉マンは本当に面白いんですけど、今のキン肉マンが本当にスゴイのはキン肉マン二世の連載を十年以上やっておきながら、キレイに二世で培った価値観をリセットしているところだと思います。
 あれだけ長い間続編ものをやっておきながらいざ初代の続編を始めたら、それがキン肉星王位争奪戦編の続きがそのまま始まったかのように開始して全盛期の面白さを受け継ぎつつ全盛期以上に面白くなったというのが今のキン肉マンのスゴイところなんですよね。

 大ヒットした漫画の続編ものというは色々あるわけですが、その大元の作品の面白さがそれら続編ものに受け継がれているか、というとそうでない作品も多いわけで、蒼天の拳北斗の拳リバイバルものかと思ったら中坊林太郎かよ!って思ったし、マーダーライセンス牙ブラックエンジェルズは雪藤が昔とキャラ違い過ぎてネタ的には面白くても正直読むのがキツかったりしたものです。
 キン肉マン二世キン肉マンの面白さをある程度は受け継いでいるけれど、ノリとか価値観なんかは初代とは別物って感じがしますよね。
 漫画の続編ものというのはその漫画が終わった後に作者が何も描いてないわけでなく色々な漫画を描いたきた上で続編ものを描くわけで、それらの作品での経験が良い方向に働く場合もあれば悪い方向に働くこともあって、経験値が上がってる以上良い影響が出てほしいものだけど過去作の続編にそれらがフィードバックされると「コレジャナイ」感ばかりが大きくなるというのはけっこうあるのかな、と思います。

 ゆで先生の場合、新キン肉マンを描く前にやっていたのはキン肉マン二世なんで、絵とか構成の経験値はまんま新肉にフィードバックできただろうけど、二世で不評だった点を全部反省し切って、初代の続編として最高のものを生み出したというのは本当にスゴイ。
 また新肉はゆで先生の担当編集者の人がものすごい敏腕でかつ肉の大ファンという話はあちこちから聞こえてきたんですが、本当に今回のキン肉マンは過去作からのネタの拾い方がスゴかったと思う。新肉が始まった当時に裁きの神ジャスティスが超人として登場するなんて誰が予想できた?
 担当編集者の方に関してはアメトークの肉回で話題が出ましたが、新キン肉マンのファンブックである超人閻魔帳にも編集者の方が担当してるページがあったりします。そのコーナーは担当編集者が選ぶ「ゆでたまご嶋田隆司先生打ち合わせ名言集ベスト10」。これを読むとゆで先生の発想のスゴさと担当さんの視点の確かさがかいま見えるので読んでない人は超人閻魔帳を買って読んでください。というか超人閻魔帳は始祖編最終回までの内容を含んだ第二弾を出してください。

 そんなわけで色々と書いてきましたが、とりあえず言いたいのは今のキン肉マンは昔やってたキン肉マンと同じノリで面白かったし、過去のキン肉マンを超えて面白くなったという続編ものとして稀有な存在なので昔キン肉マンを読んでいて、まだ今のキン肉マンを読んでいないという人がいたら新シリーズの準備中で休載している今こそ読み始めましょう、ということです。

新キン肉マンに一区切りがついた件

 キン肉マンの最終回は旧肉といい、二世無印、究極タッグといい毎回あっさり気味というかあんまり余韻がなかったりする。
 そんなわけで完璧超人、悪魔超人、正義超人の三つ巴の戦いを描いた今シリーズ(とりあえず最終ページには完璧超人始祖編となっているができれば別のタイトルを考えてほしい)の最終回についてはそれほど言うことはありません。前回までで本編のテーマはだいたい語り尽くされてると思うし。
 とはいっても悪魔超人全員集合の見開きページで生き残り組のブラックホール、ザ・ニンジャ、ジャンクマンまでが死んだような扱いになっていること、そして本編でもぞんざいな扱いだったミスターカーメンが最後のシメでも首だけしか描かれていないという点についてはさすがにツッコんでおきたい。
 最終回本編の感想としては今シリーズ事実上の主役でありながらやることやり終えたらあっさり去っていく将軍様がカッコ良すぎたし、完璧超人と悪魔超人にそれぞれの道理があることを認めながらも相対主義には陥らず、殺し合いではなく「わかり合うための戦い」を貫き通す覚悟を決めたスグルも主人公としてのカッコよさを見せてくれた。
 そして自ら暴走していたことを認めた完璧超人たちが、力の暴走の抑止力となることを誓い、今シリーズのキーパーソン、キン肉タツノリがネメシスに忠告した「慈悲」の意味を示して〆るエンディング。完璧な最終回としか言いようがない。
 ロビンマスクアシュラマンといった生死不明の超人に関してスルーされてるのは、かつてのシリーズ最終回で「ご都合主義的に復活」を見ているファンとしては物足りなくはあるんですが、その辺りは新シリーズできっちり触れていくのだと信じたい。

 2011年から6年くらい続いた今シリーズを振り返ると、正直初期はあまり期待していなかった、というかキン肉マン二世の究極超人タッグ編があまりにも無駄な引き延ばしとガッカリ展開を繰り返すシリーズだったんで、キン肉マン本体にまで泥を塗らないでくれ、という半ば監視するような気持ちで読み始めたことを今でも覚えています。
 しかし始まってみれば地味なテリーマンを地味なまま輝かせたマックスラジアル戦はまっとうに面白かったし、アイドル超人と無量大数軍の戦いがはじまると見せかけて悪魔超人軍が無量大数軍と対決!という展開になってからは今回のキン肉マン、かなり面白いのでは?と引き込まれるようになった。
 そして悪魔将軍が本格参戦した始祖編からはかつてはいなかったタイプの魅力的なキャラと期待を裏切らない熱い展開が続出し、ゆでたまご先生は今が最盛期で、今のキン肉マンが一番面白いと心から思った。
 これだけ面白いキン肉マンを描かれてしまうと次のシリーズは今シリーズに及ばないだろうし下手をすれば究極超人タッグ編みたいな最悪の代物が来る可能性さえある、とネガティブな不安も大きい。事実、今シリーズのキン肉マンって悪役超人がバトルに参戦した辺りが二世の悪魔の種子編っぽいし、悪魔超人、完璧超人、正義超人三属性超人の大抗争という旧肉からの最大ネタをやり切ってしまった感もある。
 しかし今のゆで先生ならサタン編をやろうが第三回超人オリンピック編をやろうがちゃんと面白いものを描いてくれるんじゃないか。そんな期待の方が大きい。
 そしてとりあえず新シリーズではウォーズマンを今まで以上に活躍させてほしい。そのためならロビンは別に復活させなくても構わない、といったところでひとまず終わり。

新キン肉マンベストバウト五歌仙

 次回でキン肉マンが最終回、ということでこのブログもちょっと復活します。
 今回はシリーズ終了ということで新キン肉マンベストバウトについて5位まで選んでみました。
 正直ベスト5まで絞るのは無理、という気持ちはあったけどシリーズ全部の試合から割とバランスを取って選ぶ、という感じでやってみました。

第5位:ブラックホールvsダルメシマン

 今期のキン肉マンは武道やジャスティスマンのような正統派の強さを持つ強敵が目立ったけど、ギミック系の超人も色々出てきて、ゆで先生の超人的なアイディアマンぶりも充分に堪能することができました。その中でもダルメシマンは出色の出来、といえる超人だったと思う。
 犬の超人だから嗅覚が鋭い、鋭い爪や牙で攻撃する、というのが普通の漫画家の発想で実際、ゆで先生もダルメシにそういった技を使わせている。しかし犬の斑点模様を移動させて防御に使ったり、ボールにして攻撃したり、といった無茶なアイディアはゆで先生にしか思いつかないだろう。
 斑点を使った技以外にも唾液シールド、語り草になった「犬だから骨の形をした穴を選ぶ」といったトンデモ理論、そしてまさかのブラックホールの新技などといったアイディアがわずか四話程度の試合の中に惜しげもなく詰め込まれているのは本当にスゴイ。この試合あたりでゆで先生の絶頂期は「今」なのでは?と思い始めた人も多いと思います。
 
第4位:スニゲーターvsガンマン

 ガンマンの試合だとvsバッファローマン戦の方が正直盛り上がったとは思う。しかしインパクト的にはこっちの方が色々上だった。
 ミラージュマン、アビスマン、ペインマンと人格者ばかりが始祖として登場した中で粗野でやかましいガンマンのキャラはかなり印象的。というかコイツを皮切りにザ・マンの人を見る目の確かさが怪しくなっていく……。
 ある意味やられ役っぽいキャラを相手にかつ「弟子の敵討ち」という勝ちフラグを背負っていただけに試合前はスニゲーターが勝利する、と思っていたんだけど……。
 結果はご承知のようにガンマンの圧勝。将軍様による二連勝、ジャンクマンのまさかの勝利で「案外始祖って弱いんじゃないの」と思っていた私の予想はあっさり覆された。
 今思うとこの戦い、というかガンマンの登場は完璧超人始祖編においてひとつのターニングポイントになっていたと思う。負け続きだった始祖の強さをきっちり示し、始祖にも色んな奴がいて、閻魔に対するスタンスは様々だ、ということを示したという辺りで。
 なおガンマンといえばやはり初登場ではコミカルな姿で登場したけれど、次の回では別人のような外見に変わっていたという「変身」騒動が外せない。しかも「私は変身などしなーい」なんて言っちゃってるからね。してるじゃねーか!とツッコんだ人も多いと思う。
 この騒動自体に関してはまあ「ご愛敬」で済ませていい話だとは思うけど、単行本では登場回のガンマンもすべて現デザインになってるんで、あのガンマンはWeb連載を追っていた者だけの特典となってしまった。
 私は現在、漫画雑誌はモーニング、ウルトラジャンプまんがタイムきららMAXくらいしか毎号は読んでおらず、単行本だけしか読んでない漫画も多いんですが、こういう連載を追っていないと出会えない「事件」を目の当たりにするとやはり漫画は連載で読まんとダメだなと思う。

第3位:ウォーズマンvsポーラマン

 前半と後半の盛り上がりの落差ではこの試合が一番スゴイと思う。最序盤は師を失ったウォーズマンがポーラマンを果敢に攻め立て、良い試合を見せてくれるかな……と思った途端にウォーズポンコツ化→スクラップ寸前までボコられる展開にはゆでの野郎、ウォーズマンを活躍させる気はないのか!と憤りを感じたものです。
 ロビンの言葉を思い出して反撃を開始しても相手の関節を全部潰してギブアップを狙うという作戦で「いや、それ完璧超人には絶対通用しないでしょ」と読者全員が思ったはずでなんともモヤモヤする展開が続いたんですが、ウォーズマンが完全に殺されかけた時に奇跡は起こった!
 旧肉ではスグル、ロビン以外がウォーズマンについて言及するシーンは少なかったんですが、この試合ではテリー、ブロッケン、そしてかつての名試合の相手ラーメンマンまでもがウォーズマンへの評価を語っていくところがすごく良かった。
 皆の友情パワーでウォーズマン再起動、スーパー友情モード覚醒という展開は最高だったし、パロスペシャルを極めた後でマスクを剥がされながらも、素顔を気にせずポーラマンにとどめを刺すところはこれが俺たちの見たかったウォーズマンなんだ!って思いましたね。ポーラマンの言った「前半はクソつまんねーヤツだと思っていたがラスト5分はなかなか楽しい勝負だったぜ……」というセリフに頷いた人も多いだろう。
 そんなわけでとても良い試合で満足したんだけど、その一方で「ゆで先生、本当にウォーズマン動かすのは大変なんだな……」と思ったのも事実。次シリーズ(あるかわからんが)でウォーズマンの再活躍があることを期待しています!

第2位:ロビンマスクvsネメシス

 ネメシスの試合はどれも良かったけど、一番よかったのはやはりこの試合。この頃のネメシスはキン肉族との関係は匂わせる程度でルックス的に特殊能力がない分どう戦うんだろう、という不安があったけど蓋を開けたら驚くほど技の引き出しがあって、それだけの技をバンバン出せるゆで先生は本当にスゴイと思ったものです。
 そんな強豪ネメシスに対しやはり多彩な技で対抗する正義超人のリーダー、ロビンマスクロビンスペシャルにアイスロックジャイロ、さらに新型タワーブリッジ、あげくには二世のケビンマスクの必殺技ビッグベンエッジの原型らしき技まで登場、と必殺技披露合戦のような趣がありました。
 スグルに対する思いを熱く語り、ロビンが正義超人LOVEぶりを見せつけるところも熱くて良かった。今シリーズは正直なところ正義超人の影が薄いシリーズだったんだけど、この試合は正義超人ならではの試合というものを見せつけてくれたと思う。

第1位:シルバーマンvsサイコマン

 ベスト5までに入れる試合はすごく悩んだが、1位だけは迷わなかった。なお、肉vsネメシス、将軍vs武道戦がベスト5に入ってないのはあえて入れてないというかバラエティに富んだベスト5にしたかったので大物対決枠からはこの一戦を入れて他の試合を選んだという感じです。
 道化めいた風貌に何を企んでいるかわからない怪しいヤツ、という今までのキン肉マンにいなかったタイプのキャラ、グリムリパー。コイツは何かあるだろうと思っていた人も多く、実際に完璧超人始祖サイコマンだった、ということになりました。
 余談ですがサイコマンへの名前変更を「おいグリムリパー」→「サイコマンです」のやり取りだけで読者に納得させてしまったゆで先生はやはり天才。
 一方のシルバーマンも黄金のマスク編に登場してはいたものの時々アドバイスをしたくらいで実質今シリーズ初登場のような存在でありながら、登場前に「虐殺王」と不穏なイメージを植え付けてインパクトを与えることに成功し、登場してからは正義超人の祖にふさわしいキャラでありながら虐殺王としての側面も持つ存在として、始祖編を代表する名キャラに育てあげられたのは本当にスゴイ。
 試合自体はマグネットパワー攻略がメインで他の試合の方が面白かったんじゃ……、と思う節もあるんですが、サイコマンとシルバーマンのセリフの応酬がキレッキレ過ぎてそんなことは気にならないレベル。
 特にサイコマンが拾式奥義をかけた時の「これが夢なら私は永遠に眠り続けましょう」あたりからのやり取りはコレ本当にキン肉マンなのか?と思ったくらいクラクラしたものです。
 互いを認め合いながらも、正義超人になりきれず完璧超人であり続けた虐殺王シルバーマン、道化を装いながらも誰よりも情深く正義超人の資質を持っていたサイコマン。ザ・マンが示した道に最も近づきながらも互いを認め合っていたがために破局しか迎えられなかった。そんなシチュエーションがキン肉マンで読めるとは思わなかったよ。
 新キン肉マンは悪魔超人がメインになって活躍、というある意味続編ものだからこそ出来る奇策から始まり、悪魔超人軍の活躍メインのシリーズだったけれど、始祖編になってからはレギュラー陣に負けない始祖の魅力的なキャラクター性がメインになっていたけれど、その辺りを突き詰めたのがこのシルバーマンvsサイコマン戦だったのではないかと思います。

ダイヤモンドパワー全開!!

 冒頭で将軍様が「ダイヤモンドソード」って言うとこ、すごく棒読み感があって笑った。
 そんなわけで悪魔将軍vsストロング武道戦、今回はダイヤモンドボディを出した将軍様のターンであるかのように思われたのですが。
 「自分は師を超えた」、その事実を叩きつけ武道の「永遠」を終わらせるべく、ダイヤモンドボディを発動し地獄のメリーゴーラウンドを仕掛ける将軍様。一撃目で腹に傷を負わせ、二発目は躱されたもののそれは三発目への布石。回避できない一撃が武道に決まると思いきや、ダイヤモンドボディを発動した武道によって受け止められてしまいました。武道がダイヤモンドボディ使えるというのは予想通りだったけど。
 悪魔将軍、ゴールドマンは自分と同じ域に到達した。けれどそれは決して自分を超えたわけではない。超人には限界があるのではないか。十人の始祖を鍛え上げたことでその疑念は確信に変わったと告白する武道。
 どれだけ心血を注いでも自分を超える超人を育てあげることはできない。ならば自分こそが至高の存在であり、その自分が超人を管理することこそがベストなやり方。超人閻魔である自分に皆が従うことこそがベストなやり方であり、自分は覚悟を持って永遠にそのシステムを回し続ける。

 今までにも超人閻魔の思想は語られてはきたんですが、ここまでまとまった形で示されたのは初めてのような気が。特になぜ超人たちに失望したのか、という部分に関しては超人の出来が悪い(そして神々がそんな超人たちを認めているのが気に食わない)からと示されていたものの完璧超人に、それも始祖に対しても感じていた、というのはけっこう驚きでした。
 あまりにも強くそれ故に自分の弟子にも失望していた、というのはある種悲劇ではあるんですが、自分のやり方が悪いせいで超人たちに限界が見えてしまっているのではないか?という考えに至らないのは武道の傲慢さが原因なわけで、今回また武道の老害度が上がってしまっていますな。
 悪いのは俺じゃない、ふがいない弟子どもだ!というあたりで相当ねえ。
 その一方で閻魔に近かった始祖たちはゴールド&シルバーは閻魔とは違うやり方で後進を育てることで新たな強さの形を模索したわけだし、ジャスティスマン、ペインマンあたりは現代の超人と戦い、新たな可能性を認めていったわけで武道の老害感が際立ってくる。

 武道とスペック的には並んでいるものの、それを超える決定打を持たない将軍様。そんな将軍様の脳裏に浮かんだのはかつての盟友ペインマンとのスパーリング。「私のようにもっと柔軟になれ」、その言葉を思い出した将軍が採った戦法はかつてキン肉マンを苦しめた硬度ゼロ軟体ボディ。さすがに武道も軟体ボディは使ってこないだろうし、仲間との友情で編み出した戦法で攻めていくのは勝ちフラグっぽいので期待したいところだけど、武道の方が将軍に淡々と対応しているだけでろくに攻めのカードを切ってないだけに勝ち目は薄いかなあという気がしなくもない。
 というかこれがラストバトルになるのかもまだ不明ではあるんだけど。あと将軍様は地獄の断頭台を完璧始祖としての奥義とは言ってないのでそこは隠し玉があることを期待したい。

零の力!!

 零の悲劇って超人パワーを吸い取って人間まで弱体化する技だったのか。どっちかというと「人間化パワー」を武道が送り込んで人間にする技かと思ってた。
 そんなわけで今回は地獄の九所封じ合戦の結果、武道が将軍に「握手」改め零の悲劇を仕掛けたところからスタート。技をかけたもののさすがに将軍を人間化するまで零の悲劇をかけ続けるのは難しいと判断した武道は別の技にスイッチ。その技がかつて悪魔将軍が地獄の九所封じのラストワンに見せかけたフェイク技「超人圧搾機」だったというのが渋くていいですね。
 そんな技だけにとどめまで極まるわけはないんだけど、零の悲劇でパワーを吸い取りながら技を仕掛けるというのが地味にえげつない。今までの武道は術を使わず圧倒的なパワーだけで攻めてくる印象があったけどここにきて攻撃のバラエティが増えたことで強敵感がさらに増した気が。
 もっとも将軍への余裕のない師匠面マウントをかます発言のせいで同時に小物感も出てきてはしまってるんですが。
 それに対し新たな時代を築こうとする将軍は「師を超えることが新世代の最大の課題」とかましてさらに株がアップ。その勢いで超人圧搾機から脱出し背負い投げで武道を放り投げ、そこから最大の必殺技地獄の断頭台を仕掛けます。
 しかし零の悲劇でパワーを吸い取られていたため残念ながら不発。地面に達する前に仕掛けを潰され、さらには武道によってギロチンチョップ技「冥府頭壊手」を極められてしまうのでした。ただこの技体重ちゃんと乗ってなさそうだし、どうせなら地獄の断頭台を仕掛ければ良かったのに……と思っているとやはりこの技は不発。そしてその理由は将軍の硬度調節機能が復活していたからでした。
 アビスマンに破壊されていたはずの硬度調節機能が復活しダイヤモンドボディが使えるようになった将軍様。ついでに腕に剣を生やして武道さんを殺る気マンマン、というところで今回は終わりましたが、この手の凶器攻撃はあっさり得物を破壊されて逆にピンチに、という予感しかしません。武道もダイヤモンドボディ使えるってオチは普通に来るような気がするし。