最近読んだ本

「超」怖い話Μ 平山夢明編著
 平山夢明が参加する最後の「超」怖い話。『不思議はいらない、ガチ怖で行く−−」の帯コピー通りグロ描写満載で陰惨な話が多い印象。怪談の収録本数は著者一人につき十本づつで計三十本と超怖としては少なめだけど、どれも容赦ない大作ぞろい。とはいっても箸休め的な作品がないのとバラエティ的な広がりがあまりないので一気に読むとけっこうダレるかも。なお超怖卒業はしたものの平山さんは来年の夏にソロでまた新シリーズをやるそうですが、これは実話怪談なのかな?

・虹色の童話 宇佐美まこと
 第1回幽怪談文学賞短編部門大賞を受賞した作者が放つ長編怪談。荒廃し半ば廃墟になりつつあるボロマンション「レインボーハイツ」を舞台に次々と起こる惨劇とその背後に見える怪異の影を描く。
 嫌な話で面白かったです。出てくるマンションの住人達はワイドショーでとりあげられそうな問題を抱えた人ばかりで、そんな人たちがどん詰まりの状況の中で黒いマグマを沸騰させ、破滅に至るまでをイヤ感たっぷりに描いています。半ば怪異のような魔少年瑠衣の不気味さを強調したり、レインボーハイツの立地自体におぞましい何かがあることを示唆しつつも、惨劇のトリガーになった出来事自体はあくまで人間の歪んだ悪意であったことが明かされる終盤も素晴らしい。怪異そのものは善でも悪でもないっぽいけれど、それに近づく人間の心性次第で怪異はおぞましいツールと化す、というモチーフは「るんびにの子供」とも共通ですが、長篇になった分悪意もパワーアップしています。他人の不幸や嫌な話が好きな人にお勧め。